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WordPressサイトは、公開してからがスタートです ― 私が保守を続ける理由

サイトが無事に公開されると、たいていの人はほっとします。長い打ち合わせが終わり、デザインが固まり、原稿が入り、ようやく形になった。お祝いムードになるのも自然なことです。

ただ、作る側の私からすると、公開はゴールというより、長い付き合いの始まりに近い感覚があります。マラソンでいえば、スタートラインに立ったところ。派手なテープを切る場面ではなく、号砲が鳴った瞬間です。今日は、その「公開してから」の話を書いてみます。

動いているサイトは、静かに古びていく

WordPress は世界中で使われている、よくできた仕組みです。だからこそ、常に手が入り続けています。本体のアップデート、プラグインの更新、PHP というプログラム言語自体のバージョンアップ。これらは止まりません。

つまり、公開した瞬間のサイトは、その日が一番「新しい」状態です。あとは何もしなければ、まわりが動いていく分だけ、相対的に古くなっていく。これは劣化というより、足元の地面が少しずつ動いているようなものです。本人は止まっているつもりでも、置いていかれる。

そして古くなったサイトは、ある日とつぜん牙を剥きます。表示が崩れる、管理画面が開かなくなる、フォームが送れなくなる。私の経験でも、「昨日まで普通に使えていたのに、今朝いきなり管理画面が真っ白になった」という連絡は珍しくありません。原因をたどると、裏側で動くプログラムの小さな食い違いだったりします。利用者から見れば「何もしていないのに壊れた」。でも実際には、何もしなかったことが、じわじわ効いていたのです。

一番こわいのは、止まることではなく「放置」

不具合で止まるのは、まだ分かりやすい問題です。困るけれど、気づける。

私が本当に怖いと思っているのは、誰も見ていないまま静かに動き続けているサイトです。更新が止まったWordPressは、時間が経つほど既知の弱点を抱えていきます。それは外から見えません。ある日、見知らぬ改ざんや、迷惑メールの踏み台にされていた、という形で表に出てきます。そうなってから連絡をいただくことも、実際にあります。

ここで強調したいのは、技術が難しいという話ではありません。**「誰かが定期的に様子を見ているかどうか」**という、ただそれだけの差が、数年後に大きく効いてくる、ということです。健康診断を受けている人と、不調を感じるまで病院に行かない人の違いに似ています。

保守という、目立たない仕事について

正直に打ち明けると、保守は説明しづらい仕事です。

うまくいっているとき、表向きは「何も起きていない」ように見えます。サイトは普通に表示され、フォームは普通に届く。私たちが裏でアップデートを当て、ログを眺め、怪しい兆候を潰していても、利用者の目には何も映りません。「何も起きなかった」が成果なのに、その成果は目に見えない。これが保守の宿命だと思っています。

それでも私が保守を続けているのは、いくつか理由があります。ひとつは、同じサイトを見続けるほど、対応の精度と速さが上がっていくからです。初めて触るサイトは、不具合の切り分けに時間がかかります。どこに何が書かれ、過去にどんな手が入ったのか、まず地図を描くところから始めなければなりません。けれど構造を知り尽くした相手なら、ログを一目見ただけで見当がつく。蓄積した文脈が、そのまま品質と速さに変わっていきます。これは一度きりの依頼では決して得られない、継続することでしか育たない強みです。

もうひとつは、単純に、作ったものが静かに壊れていくのを見たくないからです。手間をかけて一緒に作ったサイトが、数年後に放置されて踏み台にされている——それは作り手として、いちばん避けたい結末です。

公開後の保守は、業界の「谷間」に落ちやすい

ここで、少し業界の構造の話をさせてください。これは誰かを責める話ではなく、長くこの仕事をしていて見えてきた、役割分担のクセのようなものです。

サイトに関わる会社は、大きく三つに分かれます。デザインや原稿を扱う制作会社、サーバーやプログラムを構築するシステム会社、そしてサーバーそのものを貸すレンタルサーバー会社です。そして公開後の保守は、しばしばこの三者の「あいだ」に落ちてしまいます。

制作会社は、文章や画像の差し替えといったコンテンツの面倒は見てくれます。けれど、その下で動くWordPress本体やPHPのような土台の保守までは、手が回らない、あるいは専門外、ということが少なくありません。一方のシステム会社は、構築するのは得意でも、作り終えたら次の案件へ——日々の更新や細かな見守りまでは引き受けない、ということがよくあります。

そしてレンタルサーバー会社は、当然ながら保守の範囲はサーバーまでです。彼らはサーバーが正常に動いているかは見ていますが、その上で動くあなたのサイトを一枚の絵として見る視点は、もともと持っていません。だから何か問題が起きても、「サーバー側に異常はありません」で話が終わってしまう。原因がWordPressにあるのか、プラグインなのか、プログラムなのか——その切り分けまでは、してくれない、あるいはできないことが多いのです。利用者からすれば、サイトが動かないという一つの困りごとなのに、相談する相手によって見える範囲がバラバラで、結局どこにも全体を見てくれる人がいない。

どこかが悪いわけではありません。それぞれ得意分野と守備範囲があるだけです。ただ、サイトを持つ側からすると、**「部分ごとには相手がいるのに、全体を見て切り分けてくれる人がいない」**という、抜けが生まれやすい。そして前に書いたとおり、その土台こそが、放置すると静かに危うくなる部分なのです。

私は、サイトを維持管理していくうえでは、この谷間をまたいだ保守こそが大切だと考えています。コンテンツの更新も、その下の土台の保守も、サーバーまわりの切り分けも、ひとつながりのものとして見る。全体を一人の窓口で引き受けられれば、「これはどこの担当ですか」というたらい回しが起きませんし、何より、誰も見ていない部分が生まれずに済みます。小さな会社だからこそ、領域を分けずに丸ごと見られるのだと思っています。

「作って終わり」にしない、という選び方

だから、もしこれからサイトを作るなら、デザインや初期費用と同じくらい、**「公開した後、誰がどう面倒を見るのか」**を最初に決めておくことをおすすめします。これは制作会社を信用するかどうかの話ではなく、サイトという生き物に、かかりつけ医をつけるかどうかの話です。

「公開してからの長い時間」も担当させていただくのが、地道でありながら大切な仕事だと思っています。

WordPressサイトの保守やトラブルについて気になることがあれば、お問い合わせからどうぞ。「これは大丈夫なんだろうか」という、漠然とした不安の段階でかまいません。